役員の辞任登記に必要なのは辞任届だけでよいか!?思わぬ出費にご注意。


司法書士の手塚宏樹です。役員が辞任するのでその登記をしてほしい、というご依頼はよくお受けしますが、そう簡単にもいかない場合もあってなかなか奥が深いです。
この記事では、役員が辞任する場合の登記手続きについてご説明します。
目次
役員とは誰のことを指すのか
会社法において、役員とは取締役、監査役、会計参与、執行役、理事、監事のことを指します。
それ以外の、CEOなどのアルファベット三文字の用語は会社法上の言葉ではありません。部長とか課長とかいった役職も会社法が定めているものではありません。いずれも会社の内部で決めていることです。
役員に変更が生じたときには登記が必要
取締役、監査役、会計参与、執行役、理事、監事について、
- 就任した
- 任期満了して退任した
- 辞任した
- 解任した
などがあれば、その旨を登記簿に反映させる必要がありますので、役員変更登記をすることになります。
役員変更登記の期限はいつまで
就任や辞任などの事由が発生したときから2週間以内にすべきこととされています。遅れると過料、という規定がありますが、実際には多少遅れても過料処せられることはありません。数ヶ月程度ならばお咎めなしでしょう。
過料の額がいくらなのかとご質問を受けることがありますが、はっきりとお答えしにくいです。遅れた期間の長さによるとも言われています。数万円、という感じです。数十万円というのは聞いたことがないです。
取締役が辞任するとき
多くの場合は、取締役から辞任届をもらってそれを登記の申請書に添付すれば足ります。
様式の定めはなく、任意の用紙に下記の事項を記載すればよいでしょう。
- 「私は、○月○日をもって貴社の取締役を辞任します」
- 文書作成日
- 氏名、住所
- 押印
登記手続き上は、全文をワープロで作成しても受理されます。しかし、証拠資料としては直筆で書いてもらうべきでしょう。
押印は実印でなくてもよい
辞任届については印鑑の決まりはありませんので、実印である必要はありません。しかし、後日の紛争を避けるために、実印を押印してもらい印鑑証明書を求めておくのもよいでしょう。
※取締役が就任する場合は、取締役会設置会社以外の会社では印鑑証明書が必要になります。
代表取締役が辞任するときの辞任届には実印または法人印
辞任する取締役が代表取締役のときは、辞任届には、個人の実印を押印するか、または法人印を押印すべしとされています。
取締役が辞任するときの注意点
取締役が1名しかいない
1名しかいない取締役が辞任する登記をすることはできません。後任が決まって、その就任登記と同時にすることになります。
取締役会設置会社において3名しかいないのに1名が辞任する
取締役会設置会社は取締役が3名以上必要です。4名以上の取締役がいて、そのうちの1名が辞任するのならば問題ありませんが、現在3名ちょうどの会社でそのうちの1名が辞任する登記をすることはできません。
- 後任の就任と同時に辞任の登記をする
- 取締役会を廃止してしまう
後任者がいないので2を選択する会社もありますが、この場合は思いのほか費用が高くなってしまうのでご注意ください。役員変更登記の登録免許税1万円に加えて、
- 取締役会の廃止についての登記の登録免許税は3万円
- 株式の譲渡制限規定を変更する登記の登録免許税は3万円
(当会社の株式を譲渡するには取締役会の承認を要する→株主総会の承認を要する)
あわせて監査役設置会社をやめるかやめないかは任意です。
監査役が辞任するとき
監査役が辞任するときに辞任届が必要なのは、取締役と同様です。書き方も取締役と同じ要領でOKです。押印についての規定もありません。
監査役が辞任するときの注意点
監査役が1名しかいない
監査役1名しかいない会社では、後任者が就任するのと同時に辞任登記をする必要があります。
監査役設置会社を廃止する場合
監査役が在籍している会社はすべて監査役設置会社です。監査役をもはや置かないとするのであれば、監査役設置会社の規定を廃止する必要があります。
その場合の登録免許税は3万円です。これは取締役会の廃止とは別に発生します。
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