役員登記をしていなかったら罰金24万円がきました
友人が経営する会社に、裁判所から罰金の通知がきました。驚いた彼から連絡をもらい、その通知を見せてもらったところ、「○○年○月○日までに役員が退任し、法定の員数を欠くに至ったのに、同日以降○○年○月○日までその選任手続きを怠った」という文面になっていました。
文面のタイトルには、「会社法違反事件」という、なんだかものものしい言葉が掲げられています。そして罰金(正確には「過料」)は24万円となっています。「被審人を過料金240,000円に処する」という、かなりの怖さです。
いったいこれは何なのでしょうか。言われるがままに払わないといけないのでしょうか。
目次
株式会社の役員の任期
株式会社の取締役、監査役については、会社法に任期の定めがあります。条文はちょっと読みにくいかもしれませんが、かいつまんでいうと、中小の会社ならば役員の任期を10年まで伸ばせますよ、ということです。選任後、10年たったときの定時株主総会のときに任期が満了することになります。取締役も監査役も同様です。最長で10年なので、1年でも5年でも、自由に決めることができます。そしてこれは定款に規定を置きます。
(会社法第332条)
1 取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。
2 前項の規定は、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。
定款の任期の規定
定款における任期の規定は、会社がいつでも変更することができます。株主総会を開いて決議をすればそれだけでOKです。そしてこれが知られていないことですが、任期の規定を変更したことは、どこにも申告などをする必要はありません。公証役場や法務局などは、会社が設立されたときの定款は確認していますが、設立後に定款を変更したとしても関係ありません。
役員の任期が何年か、というのは登記簿に記載される事項でもありませんので、法務局で任期を把握しているわけではないのです。
任期が切れるとどうなるのか
役員の任期が切れたら、後任者を選ばなければなりません。たとえ同じ人がそのまま役員を続けるとしても、株主総会を開いて再選の決議をする必要があります。
これを怠ると、上記の「過料」ということになってしまいます。
役員登記
役員の再選(あるいは改選)手続きを株主総会で行ったあとは、その旨の登記をしなければなりません。会社法では2週間以内に登記をすべし、とされていますが、実際には2週間以内に登記をしている会社はほとんどないのではないでしょうか。少し(=数ヶ月)の遅れくらいは見逃してもらえます。
しかし、これが数年経ってから登記をする、なんていうことになると、お咎めがあります。
任期が切れたことはどうやって発覚するのか
その会社の役員の任期は、いってしまえばその会社にしか分かりません。設立時点においては2年だったかもしれないけれど、その後、いつ、どのように定款を変更したかは、それが登記事項でない限り、法務局には分かりません。
でも、冒頭の私の友人の会社は、役員の選任をしていなかったとして過料の通知が送られてきました。これはどうしてなのか。
法務局としては、「役員の任期は最長で10年なのだから、10年を経過しているのに役員の登記をしていない会社」に対して通知をしてくるのです。まだ事業を続けているのであればその旨、回答してください、という通知がきます。この通知に回答をしないと、職権で解散の登記をされてしまいます。
しかし、この通知に回答したとしても、解散の登記を免れるだけであり、役員の選任をしていなかったことに対する過料はまた別の話です。次はいよいよ裁判所から「過料の通知」がやってきます。会社宛てではなく、社長個人宛てに送付されます。
※ケースによっては、法務局からの通知がないまま、いきなり裁判所からの過料通知が送られてくることもあります。
選任をしなかった過料と登記をしなかった過料
過料には2つの種類があります。
1 選任懈怠(けたい)
2 登記懈怠(けたい)
1は任期が切れているのに、そもそも選任手続きさえ行っていない場合。2は任期が切れて再選手続きを行っていたが、その登記をするのがかなり遅れた場合。
過料の額
過料の額の算定方法については公表されていません。お客様や同業の仲間から聞き取りした結果、放置していた年数によるのだろう、ということになります。いままで3万円とか5万円といった数字は見たことがありましたが、今回の24万円というのは初めて見ました。
異議申立ての方法
過料通知が送られてきたとしても異議を申し立てることができます。通知を受け取ってから1週間以内とされていますので、早急に対応する必要があります。
必ず認められるか、そしていくら減額してもらえるのか、ということは事案ごとの裁判所の判断になりますので、一概には言えませんが、確実に言えることのは、まず司法書士にご相談してください、ということです。異議申立ての書類作成についてのアドバイス、やらなければいけない役員登記について、最適な方法をご提示できます。
単純な役員の重任登記ならば、会社自身で行うことも可能かもしれませんが、この通知がきてしまったら、専門家にご相談いただいたほうが間違いがありません。
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