会社を設立するときに準備すべき3種類の印鑑とは?いつ発注すればいい?
司法書士の手塚宏樹です。会社を設立するときに忘れてはいけないのは、法人印の発注。
会社の名前(商号)を決めたり、オフィスをどこにしようと考えたり、設立登記をするにあたってはやらなければいけないことがけっこうあります。
その中でも、法人印のことはわりと最後になりがちなのかなという印象を受けています。
この記事では、「法人印」とは何なのか。そしてそれはいつ発注すればいいのか、を登記手続きのプロである司法書士が解説します。
目次
法人印とは何か
法人印といっても、正確にどの印鑑のことを指しているのかよく確認しないと分からないことがあります。一般に、会社を設立するときには、3種類の印鑑をセットで注文することが多いようです。
ネットで「会社設立 法人印」などと検索すると、専門のお店のサイトがたくさん出てきますが、どこも会社設立用のセットを販売しているようです。
では、3種類の印鑑とは何でしょうか。
1.実印
法人実印といえばよいでしょうか。法務局に提出してある印鑑です。提出というより登録といったほうが分かりやすいですね。
株式会社、合同会社、一般社団法人、一般財団法人、いずれも同様ですが、設立登記を申請する際に「印鑑届書」という書類もあわせて提出します。
この書類に押印された印影が法務局でスキャンされて、その法人の実印として登録されます。
個人の実印と同じで、印鑑カードによって印鑑証明書を取得できます。
これはその会社の本店所在地を管轄する法務局だけでなく、日本全国どこの法務局でも取得できます。
重要な契約などには、法人の実印を押印して印鑑証明書も提出する、ということになります。
代表取締役が2名いる会社
会社によっては代表取締役が2名いる会社もあります。代表取締役会長と代表取締役社長がいる、という会社などですね。
株式会社は代表取締役が印鑑を登録できることになっていますから、2名いるのであれば2名とも印鑑を登録できます。しかし1名だけでもかまいません。
1名だけが登録するときには、どちらの代表取締役が登録するのも会社の任意です。
2名ともが登録するときには、別の印鑑を登録する必要があります。同じ印鑑を2人が使うということはできないのです。
会社の印鑑証明書をみると、登録された印影とともに、その印鑑がどの代表取締役のものなのかが分かるようになっています。
ちなみに、会社法で定められている株式会社の役職としては、取締役と監査役、そして代表取締役だけです。社長や会長、部長、課長、などというのは会社の内部的な規定で自由に定めることができます。
2.銀行印
銀行口座について届け出る印鑑です。これも個人と同じですね。
銀行印と法務局に届ける法人実印を同じものにすることも可能です。
3.角印
上の写真のいちばん左のもので、形のとおりの名前です。
どこに登録するわけでもなく、認印ということになると思います。請求書に押印したりすることもできますね。
保管にあたっての注意点
法務局に登録してある実印は、印鑑カードとは別に保管しておくのが好ましいでしょう。
実印は、印鑑証明書があって初めて実印としての効力を発揮するものです。印鑑証明書がなければ、それが実印だということは他人には分かりませんから。
ですので、実印と印鑑証明書を取得するための印鑑カードは、同時に盗難にあうということは絶対に避けなければいけません。
司法書士の立場からすれば、実印、印鑑カード、印鑑証明書と、不動産の権利書(登記識別情報)も絶対に別の場所に保管しておいていただきたいところです。
権利書と実印、印鑑証明書が揃ってしまうと、手続き的には第三者に名義を変更することができてしまいますので。
いつ発注すべきか
法人実印は、会社を設立するときに必要になります。申請書を法務局に出す時点で必要ですので、そのときまでにできあがっていればOKです。
もし万が一間に合わない場合は、まったく別の印鑑(たとえば個人の実印)を、いったん法人の実印として登録することもできます。
株式会社ABCという会社を設立するにあたって、「手塚」という印鑑を会社の実印として登録することができてしまうのです。
ただし、どんな印鑑でもよいわけではなくて、一辺の長さが1cmから3cmの正方形におさまる、という条件があります。
その後、「株式会社ABC」の印鑑ができあがったら、登録を変更することができます。あるいは変更しないで「手塚」印を会社の実印として使い続けることも可能です。
※法務局への設立登記申請の前の、定款認証の段階では法人実印はまだ使いません。
会社名(商号)を変更したとき
「株式会社ABC」から「株式会社甲乙丙」に商号変更登記をするときには、同時に法人実印の登録も変更することが多いと思いますが、変更しないこともできます。
違和感がありますが、個人の実印を会社の実印として登録できるのと同じようなもので、印鑑(印影)というのは、単なる模様といえるのかもしれませんね。
印鑑を紛失したとき
印鑑を紛失してしまったときは、会社の住所地を管轄する法務局に、登録印の変更の届出をしましょう。
銀行印を紛失したときは、銀行ですね。
印鑑カードを紛失したとき
印鑑カードを紛失したときは、会社の住所地を管轄する法務局に、印鑑カード再発行の届出をしましょう。
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